インバウンド集客で失敗しない ホテル・旅館のための基本戦略

インバウンド集客|2026年最新版

インバウンド集客で失敗しない
ホテル・旅館のための基本戦略

4,268万人時代に「選ばれる施設」になるために今すぐやるべきこと

常井 大輝(トコイ ヒロキ)

株式会社 Hospitality Bridge 代表 / ホテル・旅館コンサルタント

2025年、訪日外国人数は4,268万人と過去最高を更新しました。消費額は約9.5兆円、2012年の約8.6倍です。インバウンドはもはや「追い風」ではなく、ホテル・旅館経営の主軸となっています。

しかし「インバウンドを取り込みたいがどこから手をつければいいかわからない」という声は後を絶ちません。この記事では、今すぐ実践できる具体的な戦略を整理します。

まず知っておくべき2026年のインバウンド動向

戦略を立てる前に、現在のインバウンド市場の構造を正確に把握することが必要です。

国別訪日客数(2025年年間)

1位 韓国:945万人(前年比 +7.3%)
2位 中国:909万人(前年比 +30.3%)
3位 台湾:676万人(前年比 +11.9%)
4位 米国:330万人(前年比 +21.4%)
5位 香港:251万人(前年比 -6.2%)
※オーストラリアが初めて年間100万人を突破し「7つ目の100万人市場」に

2026年の最新動向(1〜3月)

2026年3月は前年同月比3.5%増の361万人で3月として過去最高を更新。一方、中国は日中関係の影響で54.6%減と大幅減が続いており、韓国・台湾・欧米豪がその穴を埋めています。欧米豪は消費単価が40万円超えのケースも見られ、高付加価値市場としての存在感が増しています。

消費行動の変化

訪日客の消費は「買い物中心」から「滞在・体験型」へ明確にシフト。宿泊費・飲食費・交通費のサービス消費が全体の7割を占めるようになっています。つまり「いい体験を提供できる宿」への需要が急増しているということです。

インバウンド集客の「入口」をつくる

インバウンドゲストが宿を探すプロセスは、日本人とは大きく異なります。まずこの「旅行者の行動プロセス」を理解することが重要です。

インバウンドFIT(個人旅行者)の予約プロセス

SNS・YouTube・旅行ブログで情報収集

Google検索・Google マップで宿を絞り込む

Booking.com・Expedia・Agodaなどの国際OTAで比較

口コミ(Reviews)を確認して予約決定

来館後の体験がSNSで拡散(次の集客につながる)

この流れのどこかに「入口」がなければ、どれだけ良い宿でも発見されません。まずは各ステップに対応する施策を整えることが先決です。

今すぐ取り組むべき5つの施策

まず全体像を把握してから、各施策の詳細を確認してください。

施策一覧

[1] 国際OTAへの掲載と最適化
[2] Google ビジネスプロフィールの整備
[3] 口コミ管理と返信の徹底
[4] 多言語対応の整備(英語が最優先)
[5] ターゲット市場を絞って深掘りする

[1] 国際OTAへの掲載と最適化

Booking.com・Expedia・Agodaへの掲載は必須です。ただし掲載するだけでは不十分。

・写真:部屋・浴場・食事・外観を高品質な写真で掲載。スマートフォンで撮った暗い写真は即座に離脱につながります。
・英語の施設説明:自館の強みが伝わる英語で書く。AIツール(ChatGPT・DeepL等)を活用すると自然な表現に仕上げやすい。
・プラン名:「スタンダードプラン」では選ばれない。「Breakfast included / Private Onsen / Seasonal Kaiseki Dinner」など内容が一目でわかるプラン名に変える。

[2] Google ビジネスプロフィールの整備

インバウンドゲストの多くはGoogle マップで宿を検索します。Googleビジネスプロフィールが未登録または情報が古いままでは、存在しないも同然。

・英語での施設名・住所・説明文を登録する
・高品質な写真を定期的に追加する
・口コミへの返信は英語でも行う(返信があるだけで信頼感が大きく変わる)
・営業時間・チェックイン時間・アメニティ情報を正確に記載する

[3] 口コミ管理と返信の徹底

インバウンドゲストは予約前に必ず口コミを確認します。評点よりも「オーナーが口コミに誠実に返信しているか」を重視するゲストが多いのが特徴です。

・良い口コミには感謝を伝える(英語で)
・悪い口コミには言い訳をせず、改善を約束する誠実な返信をする

[4] 多言語対応の整備(英語が最優先)

「英語が話せないから無理」という声をよく聞きますが、一番大切なのは話そうとする姿勢です。下手な英語でも、身振り手振りでも構いません。躊躇せず、笑顔で楽しく接客しようとするその姿勢が、必ずゲストの心に届きます。

・チェックイン案内・ハウスルール・周辺情報を英語で準備しておく
・DeepL・翻訳機など現場ツールを手元に置いておく
・ツールを使いながら笑顔でコミュニケーションを取ることが、ゲスト体験の質を高める
・完璧な英語より、誠実に向き合う姿勢のほうがゲストの記憶に残る

[5] ターゲット市場を絞って深掘りする

「全ての国の外国人を集めたい」は現実的ではありません。まず1〜2カ国に絞り、その国の旅行者が何を求めているか・いつ来るかを深く理解することが先決です。

・施設の強みと相性が良い市場を選ぶ(温泉がある旅館なら台湾・欧米豪との相性が高い)
・その国の祝日カレンダーを把握し、需要の高い時期に集中してプロモーションする
・その国の旅行者が使うSNS・OTAを調べて、そこに情報を掲載する

市場別の特徴と戦略のポイント

韓国(年間945万人)

週末感覚で2〜3日の短期訪問が多い。リピーターが非常に多く、地方の穴場スポットへの関心が高い。NaverやInstagramでの情報収集が中心。韓国語での発信・掲載が効果的。

台湾(年間676万人)

5回以上来日した超リピーターが多く、地方の深い体験を求める傾向が強い。温泉・食文化・四季の体験への支出が拡大中。台湾の連休(清明節・端午節等)に合わせたプロモーションが効果的。

欧米豪(米国330万人・オーストラリア105万人等)

1人あたり消費単価が最も高く(40万円超えも)、滞在日数も長い。日本の伝統文化・温泉・食体験への需要が極めて高い。Booking.com・Tripadvisor・Instagramでの情報収集が主流。英語での発信品質が直接予約数に影響する。

中国(年間909万人・ただし2026年は大幅減)

2026年は日中関係の影響で54.6%減と急減。回復を待ちながら、小紅書(RED)・微信(WeChat)での情報発信を継続しておくことが長期的に重要。中国市場のみへの依存は現状リスクが高い。

必ず知っておくべきカントリーリスク

インバウンド集客を進める上で見落とされがちな視点が「カントリーリスク」です。特定の国・地域からの集客に依存しすぎると、政治・外交・自然災害・感染症といった自分ではコントロールできない外部要因によって、一夜にして売上が消えるリスクがあります。

2026年の中国客54.6%減は、その典型例です。日中関係の悪化・中国政府の渡航注意喚起・航空便の減便が重なり、中国に依存していた施設は大きなダメージを受けました。同様のことは過去にも繰り返されています。

過去に起きたカントリーリスクの実例

・2020〜2022年:新型コロナウイルスによるインバウンド需要のほぼ全消滅
・2019年:日韓関係悪化による韓国客の急減(前年比約25%減)
・2011年:東日本大震災後の全市場からの旅行者急減
・2013〜2014年:尖閣諸島問題による中国客の大幅減少
・2026年:日中関係の影響による中国客54.6%減

市場集中リスクの目安

インバウンド売上の50%以上を1カ国に依存している場合、カントリーリスクが顕在化した際の経営へのダメージが非常に大きくなります。特定の国のゲストが多いことは強みでもありますが、その依存度は常に意識しておく必要があります。

カントリーリスクへの備え:
・インバウンド売上を複数の国・地域に分散させる
・国内客(日本人)との売上バランスを意識的に保つ
・特定の国の比率が高まってきたら、他市場の開拓を意識的に進める
・外交関係・感染症・為替動向を定期的にチェックする習慣をつくる
・リスクが顕在化したときに素早く対応できる「代替市場」を常に用意しておく

インバウンド集客で最も大切なこと

技術・ツール・多言語対応より、根本的に大切なことがあります。それは「自館が何を提供できるか」を自分の言葉で語れることです。

インバウンドゲストは日本の「本物の体験」を求めています。温泉・旬の食材・手仕事の品・地域の文化----これらは地方の中小旅館が大都市の大型ホテルより優位に立てる分野です。

まとめ:
・2025年訪日客4,268万人・消費額9.5兆円。インバウンドは経営の主軸
・国際OTA・Googleビジネスプロフィール・口コミ管理が集客の入口
・英語対応は完璧でなくていい。話そうとする姿勢と笑顔がゲストの心をつかむ
・消費は「買い物」から「体験・滞在」へシフト。地方旅館に最大のチャンス
・ターゲット市場を1〜2カ国に絞り、深く理解することから始める
・カントリーリスクを常に意識し、特定の国への過度な依存を避ける

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常井 大輝(トコイ ヒロキ)|株式会社 Hospitality Bridge

セントラルフロリダ大学ホスピタリティマネジメント学部卒業。国内外のホテル・旅館でのインバウンド対応・収益改善・マーケティングの実務経験をもとに、中小宿泊施設の経営をトータルで支援。2023年11月創業。

参考:日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計(2025年・2026年)/ アウンコンサルティング「2025年訪日外国人の年間動向と2026年の予測」/ やまとごころ.jp インバウンドデータ

https://hospitalitybridgeconsulting.com/