旅館・ホテルの支配人に求められる 本当の役割とは何か
マネジメント
旅館・ホテルの支配人に求められる
本当の役割とは何か
「現場のプレイヤー」から「組織を動かすリーダー」へ
常井 大輝(トコイ ヒロキ)
株式会社 Hospitality Bridge 代表 / ホテル・旅館コンサルタント
「支配人になったのに何をすればいいかわからない」「現場仕事ばかりで管理職の仕事ができていない」
こんな悩みをよく聞きます。支配人の役割は、優秀なスタッフであることではなく、組織全体を機能させることです。この違いを理解しているかどうかで、旅館・ホテルの業績は大きく変わります。
支配人・中間管理職・現場スタッフの違い
多くの支配人は、現場スタッフとして優秀だったために昇進します。しかし「自分でやった方が早い」という感覚が、組織の成長を止めてしまいます。
▲ 支配人の仕事
組織・戦略・数字・人を動かす。ゴールを決め、仕組みをつくり、チームが動ける環境を整える
▲ 中間管理職
チームとのブリッジ役。現場の声を上に伝え、方針を現場に落とし込む
▲ 現場スタッフ
ゲストへの直接サービス。日々の業務の実行者
支配人が「自分でやる」ことの本当のコスト:
支配人がフロントに立つ時間は、戦略・育成・数字を考える時間を失うことと同じです。短期的には助かっても、長期的には組織が育ちません。
支配人に求められる6つの役割
支配人の仕事は多岐にわたりますが、特に重要な6つに整理できます。
[1] 方向性の設定
旅館の目標・ビジョンを定め、チーム全体が同じ方向を向けるようにする
[2] 数字の管理
稼働率・RevPAR・コストを把握し、収益を最大化する意思決定を行う
[3] 人材育成
スタッフの強みを見極め、適切な権限委譲と育成計画を実行する
[4] 仕組みづくり
属人化しない業務フロー・マニュアルを整備し、誰でも動ける組織をつくる
[5] 関係者との連携
オーナー・OTA・取引先・行政など外部との関係を管理する
[6] 市場の把握
競合・インバウンド動向・地域の需要変化をウォッチし戦略に反映する
優れた支配人がやること・やらないこと
優れた支配人がやること
○ 週次で数字を確認し、対策を考える
○ スタッフに仕事を任せ、結果を評価する
○ 問題の「原因」を探り、仕組みで解決する
○ ゲストのフィードバックを戦略に活かす
○ 自分の時間を「考える仕事」に使う
やりがちなNG
× 忙しいを理由に数字を後回しにする
× 「自分でやった方が早い」と仕事を抱え込む
× 問題が起きたらその場だけで対処する
× クレーム対応に追われて戦略を考えない
× 現場に入りすぎて管理職の仕事が後回しになる
支配人の理想的な1日の時間の使い方
支配人の時間の使い方は、そのままホテルの未来への投資です。
朝
数字の確認・朝礼
前日の稼働率・売上・口コミをチェック。オンハンドのチェックも忘れずに!チームへの短い共有と方向確認
午前
戦略・計画業務(考える仕事)
料金設定・OTA管理・採用・研修計画など。この時間帯を現場対応で潰さないことが最重要です。
午後
1on1・スタッフ面談
月に数回、スタッフと個別に話す時間を確保。育成・相談・フィードバック
夕方
翌日の準備・振り返り
翌日の予約状況確認・スタッフへの引き継ぎ・自分の行動を振り返る
支配人が変わると、旅館が変わる
支配人がスタッフを信頼して任せられるようになると、スタッフは自発的に動き始め、ゲストへのホスピタリティが自然と生まれます。
「プレイヤーとして優秀」から「組織を機能させるリーダー」への転換。これが支配人に求められる最大の変化です。
まとめ:
・支配人の仕事は「自分がやる」ではなく「チームを動かす」こと
・6つの役割を意識して、時間を「考える仕事」にシフトする
・スタッフに任せることが、長期的な組織の成長につながる
常井 大輝(トコイ ヒロキ)|株式会社 Hospitality Bridge
セントラルフロリダ大学ホスピタリティマネジメント学部卒業。国内外のホテル・旅館でのマネジメント・人材育成の実務経験をもとに、中小宿泊施設の収益改善・組織づくり・インバウンド対応を支援。2023年11月創業。
https://hospitalitybridgeconsulting.com/