2026年6月 8日

OTA依存から脱却し、 自社直販を増やす方法 「売上は増えているのに利益が残らない」を解決する販売戦略の本質

収益改善・販売戦略

OTA依存から脱却し、
自社直販を増やす方法

「売上は増えているのに利益が残らない」を解決する販売戦略の本質

常井 大輝(トコイ ヒロキ)

株式会社 Hospitality Bridge 代表 / ホテル・旅館コンサルタント

「OTAからの予約は増えているのに、手元に残る利益が増えない」
「稼働率は上がっているのに、経営が楽にならない」

こういった相談が後を絶ちません。OTAは集客において強力なツールですが、正しく理解せずに依存すると収益構造が壊れていきます。OTAとの正しい付き合い方と、自社直販を増やす具体的な方法をお伝えします。

OTAのプラスアルファのコストを理解する

OTAの「手数料」は、契約書に記載されている基本手数料だけではありません。それ以外に積み上がる「プラスアルファのコスト」が、実際の支出を大きく押し上げています。

OTAで発生するプラスアルファのコスト(国内OTA)

ポイント原資負担:楽天ポイント・じゃらんポイントはホテル側が原資を負担。「ポイント10倍キャンペーン」に参加すると、その分だけホテルが支払う
キャンペーン参加費:「スーパーSALE」「お盆特集」「地域応援企画」など、特集ページへの掲載には別途費用や追加割引義務が発生する
優先表示費用:検索結果の上位に表示させるための掲載広告費
決済手数料:OTA経由のクレジットカード決済分がさらに差し引かれる

結果として、表示上の手数料8〜10%が実質15〜20%以上になるケースが大半です。

つまり、10万円の予約から手元に残るのは8万円以下ということが珍しくありません。この「見えないコスト」を正確に把握せずに経営判断をしている施設は非常に多いのが現状です。

レベニューマネージャーの落とし穴

ここで多くの施設が陥りやすい、重要な落とし穴についてお伝えします。

レベニューマネージャー(収益管理担当者)の使命は、本来「会社の利益を最大化すること」です。しかし現場では、「売上(レベニュー)を上げること」だけを目的にした動きをしてしまうケースがあります。

利益を無視した売上重視の動き(よくある落とし穴)

x OTAのキャンペーンに積極的に参加し、稼働率を上げて評価を得る
x 価格を下げることで予約数を増やし、表面上の売上を高く見せる
x 手数料やポイント原資の実質コストを計算せずにOTA施策を進める
x 「稼働率〇〇%達成」「予約件数〇〇件増」といった指標だけで成果を報告する

本来あるべき姿

o 売上ではなくGOP(粗営業利益)で成果を評価する
o チャネルごとの実質コストを把握した上で販売戦略を立てる
o OTAと直販の利益差を数字で示し、直販比率を高める施策を優先する
o 稼働率と単価のバランスを取り、RevPARと利益の両方を最大化する

現場で感じること:
売上が上がっているのに利益が残らない施設の多くは、このレベニューマネジメントの本質を見誤っています。会社の目的は利益の最大化。稼働率や予約数はその手段であり、目的ではありません。より効果的な施策を打ち続けることが、持続可能な経営につながります。

海外OTAへの依存が引き起こす2つのリスク

海外OTAとの付き合い方には、注意が必要な2つのリスクがあります。

リスク [1] 価格主導権の喪失

海外OTAは「会員限定料金」という条件で掲載契約を求めることがあります。これは「該当OTAの会員は10%ほどの割引を必ず行うこと」という契約上での縛りです。

具体的な影響:
・会員限定料金に同意すると、自社サイトと同じ料金か、それ以下の価格設定になる
・「直販の方がお得」という差別化ができなくなる
・ゲストが「海外OTAで予約した方が安いか同じ」と学習し、自社サイトへの流入が減り続ける
・価格を上げたくても「OTAの最安値保証に抵触する」という制約で動けなくなる

価格の決定権を外部に握られた瞬間から、自社の販売戦略の自由度は大きく制限され、管理、コントロールにも影響を及ぼします。

リスク [2] 一方的な戦略変更

海外OTAは日本の施設に事前相談なく、ルールや手数料体系を変更することがあります。

実際に起きた事例:
・特定の施設カテゴリーの手数料を突然引き上げ、事前通知は数週間前のみ
・パートナープログラムを導入し、参加しないと検索順位が大幅に下落
・キャンセルポリシーの基準を変更し、施設側の設定が無効化されるケースが発生
・アルゴリズムの変更で、これまで上位表示されていた施設が突然下位に落ちる

依存度が高いほど、このような変更への対応コストと経営へのダメージが大きくなります。

OTAと直販、利益インパクトの比較

実際に数字で見てみましょう。1泊15,000円・20室の旅館を例に、OTA予約と直販予約の利益差を比較します。

1泊15,000円の客室・月間100泊で試算

OTA経由(実質手数料15%と仮定)

売上:15,000円 x 100室 = 150万円
OTAコスト:150万円 x 15% = 22.5万円
手元に残る金額:127.5万円

直販経由(決済手数料3%のみと仮定)

売上:15,000円 x 100室 = 150万円
決済コスト:150万円 x 3% = 4.5万円
手元に残る金額:145.5万円

月間の利益差:17.5万円 / 年間:210万円

同じ売上・同じ稼働率でも、予約経路が変わるだけで年間210万円の利益差が生まれます。規模が10倍、100倍ならその額はとてつもない数値。この数字を経営者・担当者が把握しているかどうかで、施策の優先順位が大きく変わります。

自社直販を増やす5つの施策

数字の重要性を理解した上で、具体的な施策に移ります。

施策一覧

[1] 自社サイトを「予約したくなるサイト」に変える
[2] 直販限定の特典・プランをつくる
[3] メール・SNS公式でリピーターと直接つながる
[4] Googleビジネスプロフィールを直販導線にする
[5] チェックアウト時に次回予約を促す

[1] 自社サイトを「予約したくなるサイト」に変える

多くのホテルの自社サイトは「会社概要のようなサイト」になっています。以下の点を見直すだけで予約率が変わります。

・魅力的な写真:部屋・浴場・食事・外観・スタッフの顔を高品質で掲載
・「なぜこのホテルに泊まるべきか」が3秒でわかるトップページ
・3クリック以内で予約完了できる簡単なフロー
・GoogleやOTAの口コミを自社サイトに掲載して信頼感を高める
・スマートフォン対応(予約の70%以上がスマホ経由)

次のアクション:自社サイトをスマホで開き、初めて訪れるゲストの目線でチェックする。「3秒で魅力が伝わるか」「3クリックで予約できるか」の2点を確認する。

[2] 直販限定の特典・プランをつくる

OTAと同じ価格でも「直販にしかない価値」があれば選ばれます。

・直販限定の部屋グレードアップ・アーリーチェックイン・レイトチェックアウト
・直販限定の朝食無料・ウェルカムドリンク・地域体験プラン
・連泊割引は直販のみ適用

次のアクション:自施設のコストを確認し、OTAとの手数料差(15〜18%)の一部をゲストへの特典に転換する。年間210万円の利益差を「特典原資」として活用する発想で設計することで付加価値の創造とADRやCS、ESの向上など様々な計画が実行可能に。

[3] メール・SNS公式でリピーターと直接つながる

一度来てくれたゲストとの直接のつながりが、最も低コストな集客チャネルになります。

・チェックイン時に「SNSフォローなどで次回10%オフ」と案内
・滞在中にWi-Fiパスワードと引き換えにメール登録を促す
・退館後1週間以内に感謝メール+次回予約の案内を送る
・SNS公式アカウントで季節のプラン・限定キャンペーンを配信

次のアクション:SNS公式アカウントを開設し、チェックイン時の案内トークを1本作成する。まず月10人の登録を目標にする。

[4] Googleビジネスプロフィールを直販導線にする

ゲストがホテルをGoogle検索したとき最初に表示されるのがGoogleビジネスプロフィールです。ここを直販導線にすることで、OTAを経由させずに自社サイトへ誘導できます。

・「公式サイト直予約が最もお得です」とプロフィールに明記
・高品質な写真を月1回以上追加する(更新頻度が検索順位に影響)
・口コミへの丁寧な返信で信頼感を高める
・予約ボタンのリンクを自社予約システムに直接つなげる

次のアクション:今すぐGoogleビジネスプロフィールを開き、予約ボタンのリンク先が自社サイトになっているか確認する。なっていない場合は即日修正する。

[5] チェックアウト時に次回予約を促す

最も見落とされがちで、最も効果的な施策です。「また来たい」と感じているチェックアウトの瞬間こそ、次回直販予約を促す最高のタイミングです。

・「次回は直接ご予約いただくと〇〇の特典があります」と一言添える
・次回予約の割引クーポンをその場で手渡す
・SNS公式アカウントをその場で登録してもらう
・「いつ頃また来る予定ですか?」と会話をつなげ、仮予約を促す

次のアクション:チェックアウト時の案内トークを1本作成し、全スタッフに共有する。来月の直販予約件数を記録し始める。

OTAをやめるのではなく「正しく使う」

ここまでお伝えしてきたことは「OTAをやめましょう」ではありません。OTAは新規顧客との出会いの場として引き続き重要です。大切なのは「OTAで出会ったゲストを、次回から直接の関係に移行させていく」という発想です。

OTAと直販の正しい役割分担

OTA:新規ゲストとの出会いの場・認知獲得
自社直販:リピーターとの直接の関係・利益の最大化

OTA経由で来たゲストを「感動させて」「直接つながり」「次回は直販で」----
このサイクルを回すことが、中長期的な収益改善の本質です。

まとめ:
・OTAには手数料以外のプラスアルファのコストがあり、実質15〜20%以上になるケースが大半
・レベニューマネジメントの本質は「売上最大化」と捉えがちですが、会社の目的である「利益最大化」が本来の目的
・海外OTAへの依存は価格主導権の喪失と一方的な戦略変更リスクを生む
・同じ売上でもOTA→直販に移行するだけで年間数百万円の利益差が生まれる
・直販施策5つのうち、まず今日できる「Googleプロフィール確認」と「チェックアウト時の一言」から始める
・OTAは「新規出会いの場」として正しく使い、次回から直接の関係へ移行させるサイクルをつくる

「自社直販を増やす具体的な方法を相談したい」

施設の現状を診断し、最適な直販強化の施策をご提案します。
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常井 大輝(トコイ ヒロキ)|株式会社 Hospitality Bridge

セントラルフロリダ大学ローゼンホスピタリティマネジメント学部卒業。ハイアットリージェンシー那覇沖縄・琉球ホテル&リゾート名城ビーチでOTAセールス・レベニューマネジメントを担当。一休では開業後半年で全国1位を達成。2023年11月創業。

参考:観光経済新聞「第20回オンライントラベル予約実態調査」(2026年1月)/ 各OTA公式情報(2026年時点)

https://hospitalitybridgeconsulting.com/

2026年5月 8日

世界基準の接客と日本基準の接客。 その違いを理解することが最初の一歩 インバウンドゲストを迎える前に知っておくべき、接客文化の本質的な差

インバウンド接客

世界基準の接客と日本基準の接客。
その違いを理解することが最初の一歩

インバウンドゲストを迎える前に知っておくべき、接客文化の本質的な差

常井 大輝(トコイ ヒロキ)

株式会社 Hospitality Bridge 代表 / ホテル・旅館コンサルタント

インバウンド集客の準備を整えて、いざ外国人ゲストが来た----。そのとき「どう接客すればいいかわからない」という不安を感じるスタッフは少なくありません。

実はその不安の多くは、「日本の接客の常識が、世界では常識ではない」ということを知らないことから来ています。違いを理解すれば、不安は自信に変わります。

まず根本から:「Hospitality」と「Service」は別物である

日本では「Hospitality=おもてなし」と訳されることが多いですが、この理解のままでいる限り、欧米のゲストに本当に喜ばれる接客はできません。そして組織づくりや仕組み化もうまくいきません。

オックスフォード英語辞典はそれぞれをこう定義しています。

Service(サービス)

"The action of helping or doing work for someone."

誰かのために働くこと、助けること。サービスは「行為」です。マニュアル通りに動くこと、決まった手順を実行することがサービスにあたります。

Hospitality(ホスピタリティ)

"The friendly and generous reception and entertainment of guests, visitors, or strangers."

ゲスト・訪問者・見知らぬ人を、友好的かつ寛大に迎え入れ、楽しませること。相手のためにありたいという姿勢は日本の「おもてなし」と共通しています。しかし決定的に違うのが「entertainment(楽しませる)」という言葉が入っていること。ここが日本と欧米のホスピタリティの最大の違いです。

「楽しませる」という概念が日本に欠けている

ディズニー・マクドナルド・スターバックス----これらのアメリカ発のブランドが世界中で愛されているのは、単に商品やサービスの質が高いからではありません。ゲストを「楽しませる」ことを組織の中心に置いているからです。

ディズニーの従業員は「キャスト(出演者)」と呼ばれます。スターバックスのバリスタは名前を呼び、カップにメッセージを書く。マクドナルドの笑顔は世界共通のマニュアルです。これらはすべて「楽しませる」を意図的に設計した結果です。

日本のホスピタリティ企業が海外でブランドを築けない理由

日本の旅館・ホテルの「気づかい」「丁寧さ」「清潔さ」は世界トップレベルです。しかし海外に出ると、なかなかブランドとして定着しません。その最大の理由が、「楽しませる」という要素の欠如です。

丁寧に、静かに、完璧にこなす----それはServiceです。しかし、ゲストが笑顔で帰り、友人に話したくなる「体験」を生み出すためには、コミュニケーションを通じた「entertainment」が不可欠です。

ServiceとHospitalityの本質的な違い

Service(サービス):正確に、丁寧に「する」こと
Hospitality(ホスピタリティ):相手のためにありたい姿勢 + 楽しませること

チェックインを正確にこなすのはService。
「どこから来たんですか?今日の夕食はもう決めましたか?
近くに最高のお店を知ってますよ!」と会話を楽しむことがHospitality。

日本の「おもてなし」の精神は素晴らしい。しかし「楽しませる」という表現と、それを生み出すコミュニケーションが苦手なために、その精神が外国人ゲストに届いていないことが多いのです。精神は十分に持っている。あとは「楽しませる勇気」を持つだけです。

欧米のゲストが求めるもの:会話と関係性

日本のビジネスシーンでよく言われることがあります。「日本人は会議が始まるとすぐに本題に入る。欧米では仲良くなってから仕事の話をする」。これはホテルの接客でも同じです。

欧米のゲストは会話そのものを楽しみ、関係性を求めます。無言で手続きをこなすだけのチェックインは、彼らにとって「事務的すぎる」「温かみがない」と感じられます。たとえ短い時間でも、一言の会話がそのホテル・旅館への印象を大きく変えます。

言葉が出てこなくてもいい:
英語もゲストの言語もわからない。でもゲストは何かを伝えようとしている----そのとき大切なのは、「わかろうとする姿勢」です。スマホの翻訳アプリを出して一緒に画面を見ながら笑う。身振り手振りで伝え合う。その過程自体がゲストにとって「特別な体験」になります。言葉が通じないからこそ生まれる温かいコミュニケーションがあります。

日本基準と世界基準の接客、7つの違い

[1] 挨拶とアイコンタクト

日本基準

お辞儀を中心とした挨拶。アイコンタクトを長く続けることは時に失礼とされることもあり、謙虚さの表現として目線を少し下げることがある。

世界基準

目を合わせて笑顔で挨拶することが誠実さの表現。アイコンタクトを避けると「自信がない」「歓迎されていない」と受け取られることがある。特に欧米・中東・ラテン系の文化では、アイコンタクトは信頼の証です。

現場のヒント:アイコンタクト+笑顔+お辞儀の組み合わせが最強。日本のお辞儀は外国人ゲストに非常に喜ばれます。目を見て、笑って、お辞儀する。これだけで印象が大きく変わります。

[2] 名前と自然な会話のきっかけ

日本基準

「お客様」と呼ぶのが一般的。名前で呼ぶことは馴れ馴れしいと感じられる場合もあり、苗字に「様」をつけるのが丁寧とされる。

世界基準

名前で呼ばれることは歓迎と親しみの表現。「お客様」という匿名の呼び方より、名前で呼ばれることで「自分を覚えてくれている」という特別感が生まれます。名前を自然に知るには、会話の中で相手の持ち物・旅程・出身地などに触れることから始めるのが自然です。「素敵なバッグですね、どちらからいらっしゃったんですか?」といった一言が会話の入り口になります。

現場のヒント:気に入られると相手から名前を聞かれることが多いです。そのときのために、スタッフ自身もわかりやすいニックネームを持っておくと親近感が一気に上がります。例えば「Hiroki」が難しければ「Hiro」と名乗るだけで、ゲストが喜んで呼んでくれます。

[3] 笑顔と感情表現

日本基準

感情を抑えた落ち着いた接客が「プロらしい」とされる文化もある。過度な笑顔や大きなリアクションは軽薄に見えることがある。

世界基準

笑顔と感情表現は歓迎の証。無表情で淡々と接客されると「歓迎されていない」「機嫌が悪いのか」と不安を感じるゲストが多い。特に欧米・東南アジア・ラテン系の文化では、スタッフの感情表現がゲスト体験の大きな要素になります。

現場のヒント:言葉が通じなくても、笑顔は100%通じる。むしろ言葉が出てこないときほど、大きな笑顔と身振りで気持ちを伝えることが信頼につながります。

[4] 「NO」の伝え方----これが最も重要

日本基準

「できかねます」「少々難しい状況でございます」など、直接的なNOを避けた婉曲表現が丁寧さの証。相手を傷つけないための文化的な知恵。

世界基準

「I'm sorry, that's not possible, but I can offer you...」のように、NOを明確に伝えた上で代替案を提示することが誠実さの表現です。婉曲すぎるNOはYESと誤解されることがあり、後になってトラブルになるケースが非常に多い。

さらに深刻なのが、曖昧なNOが「大丈夫そう」と解釈され、押してくるケースです。「難しいですね...」と濁すと「じゃあできるじゃないか」と余計に要求が強くなることがあります。明確なNOこそが相手への誠実な対応であり、むしろトラブルを防ぎます。

現場のヒント:「I'm sorry, we can't do that」と明確に伝えた後、必ず「But I can...(でも〇〇はできます)」と代替案をセットで伝える。NOだけで終わらせないことが大切です。明確なNOは冷たさではなく、誠実さです。

[5] パーソナルスペースと身体的距離

日本基準

一定の距離を保つことが礼儀。身体的接触(握手・ハグ等)は基本的にしない。物を手渡すときも丁寧に両手で差し出す。

世界基準

握手は欧米・中東・アフリカなどでは基本の挨拶。ラテン系・南欧では頬へのキスも一般的。ただし、こちらから積極的にハグや握手を求める必要はありません。求められたら自然に応じることが大切です。

現場のヒント:握手を求められたら笑顔で応じる。それだけで十分です。ゲストと打ち解けてくると、相手からスタッフの名前を聞いてくることが増えます。そのためにも、覚えやすいニックネームを持っておくことが有効です。

[6] スモールトーク(小話)の重要性

日本基準

業務に関係のない会話は控えめにすることが多い。静かで落ち着いた接客が好まれる傾向がある。ビジネスの場でも本題から入ることが多い。

世界基準

スモールトークはホスピタリティの核心です。欧米では「仲良くなってから仕事の話をする」文化が根強く、これはホテルの接客でも同じ。天気・旅行の感想・出身地・好きな食べ物など、軽い会話がゲストとの関係をつくります。「How are you enjoying Japan so far?」の一言が、ゲストに「ここのスタッフは温かい」という印象を与えます。

現場のヒント:相手の持ち物・服装・旅行バッグのステッカーなど、目に入るものから会話のきっかけを見つける。「That's a great camera, are you a photographer?」など、相手のことを観察して話しかけると自然な会話が生まれます。完璧な英語でなくていい。たどたどしくても、話しかけようとする姿勢が伝わります。

[7] チップと感謝の表現

日本基準

チップの文化がない。サービスへの感謝は笑顔や言葉で伝えるのが一般的。チップを渡そうとするゲストに対して、断ることが「礼儀」とされる場合もある。

世界基準

チップはサービスへの感謝の直接的な表現。特に米国・カナダ・中東・東南アジアの一部からのゲストは、チップを渡そうとすることが多い。

現場のヒント:チップを渡されたときは、まず「Thank you so much, that's very kind of you」と感謝の気持ちを受け取ってから、施設のポリシーを穏やかに説明する。頑なに断るよりも、ゲストの気持ちを一度受け取ることが大切です。

日本の「おもてなし」が世界で輝くために

「Hospitality=おもてなし」と単純に訳してしまうと、その本質を見失います。ホスピタリティとは「友好的かつ寛大に、相手を迎え入れる姿勢」です。マニュアルや手順ではなく、人と人との関係性の中に生まれるものです。

日本の「おもてなし」はこの精神に非常に近い。しかしその表現方法が内向きで伝わりにくいために、外国人ゲストには届いていないことがある。精神は十分に持っている。あとは「表現する勇気」を持つだけです。

おもてなし + 世界基準のコミュニケーション = 世界最強の接客

アイコンタクト + 笑顔で挨拶する
相手への観察から自然な会話を始める
わかりやすいニックネームで親近感をつくる
NOは明確に、でも代替案をセットで伝える
スモールトークで「温かいスタッフ」という印象をつくる
言語の壁は、姿勢と笑顔と「わかろうとする気持ち」で超える

スタッフへの一言:完璧な英語より大切なこと

セントラルフロリダ大学でホスピタリティを学び、米国のホテル現場で働いた経験から言えること。それは「言語の壁を越えるのは、言葉ではなく姿勢だ」ということです。

たどたどしい英語でも、身振り手振りでも、一生懸命に伝えようとするスタッフのことをゲストは必ず覚えています。逆に流暢な英語でも、笑顔もなく事務的に対応するスタッフの印象は薄い。

ゲストも英語が得意ではないかもしれない。それでも何かを伝えようとしている。そのとき、一緒に「どうにかして伝え合おう」とする姿勢こそが、ホスピタリティの本質です。

まとめ:
・Serviceは「行為」、Hospitalityは「相手のためにありたい姿勢+楽しませること」
・「entertainment(楽しませる)」が日本と欧米のホスピタリティの最大の違い
・楽しませることはコミュニケーションから生まれる。これが日本人の最も苦手な点
・ディズニー・スターバックスが世界で愛されるのは「楽しませる」を設計しているから
・日本の「おもてなし」の精神は十分ある。あとは「楽しませる勇気」を持つだけ
・アイコンタクト・笑顔・スモールトーク・ニックネームがその入り口になる
・NOは明確に。曖昧にするとかえってトラブルを招く
・完璧な英語より、話しかけようとする姿勢がゲストの心に届く

「インバウンド接客の研修・スタッフ育成について相談したい」

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常井 大輝(トコイ ヒロキ)|株式会社 Hospitality Bridge

セントラルフロリダ大学ホスピタリティマネジメント学部卒業。米国・日本のホテル現場での接客・マネジメント実務経験をもとに、中小宿泊施設のインバウンド対応・スタッフ育成・収益改善をトータルで支援。2023年11月創業。

参考:Oxford English Dictionary「Service」「Hospitality」定義

https://hospitalitybridgeconsulting.com/

2026年3月14日

中小旅館でもできる レベニューマネジメント入門

レベニュー管理

中小旅館でもできる
レベニューマネジメント入門

売上を最大化する「考え方」と「最初の一歩」

稼働率(Occupancy)
ADR(平均客室単価)
RevPAR(収益力の指標)
HT
常井 大輝(トコイ ヒロキ)
株式会社 Hospitality Bridge 代表 / ホテル・旅館コンサルタント

「レベニューマネジメントは大手ホテルがやるもの」と思っていませんか?
実は、客室数10〜30室の中小旅館こそ、正しい料金管理が収益に直結します。特別なシステムがなくても、考え方を変えるだけで売上は変わります。

1レベニューマネジメントとは?

一言でいえば、「売上を最大化するための価格・在庫の管理戦略」です。旅館の客室は「期限がある在庫」です。今夜売れなければ、その収益は永遠に取り戻せません。

だからこそ、需要に応じて正しい価格・正しいタイミングで売ることが重要なのです。

2まず知っておきたい3つの指標

難しい計算は不要です。この3つだけ覚えてください。

指標 ①
稼働率
全客室のうち実際に売れた割合
例)20室中15室 → 75%
指標 ②
ADR
Average Daily Rate
実際に売れた客室の平均料金
指標 ③(最重要)
RevPAR
稼働率 × ADR
旅館全体の収益力を示す指標
【具体例で理解する RevPAR】
稼働率75% × ADR 12,000円 = RevPAR 9,000円
稼働率90% × ADR 10,000円 = RevPAR 9,000円

→ 稼働率が高くても、単価が低ければ同じ収益にしかなりません。「満室=成功」ではないのです。
3中小旅館が陥りがちな3つの失敗
01
料金を季節でしか変えていない
同じ平日でも、地域イベントや前後の祝日で需要は大きく変わります。1日ごとの需要を見る習慣が必要です。
02
満室になって喜んでいる
満室は「売り切れた」状態。料金を上げていれば同じ予約数でも売上は増えていた可能性があります。
03
OTAの料金を横並びにしている
競合に合わせるだけでは、自館の強みに合った価格設定ができません。自館データをもとに判断する力が必要です。
4今日から始められる3つのステップ
1
過去1年の稼働率と料金をExcelに整理する
どの日が強く、どの日が弱いかを「見える化」するところから始まります。データがなければ正しい判断はできません。
2
需要が高い日・低い日を分類する
祝日・連休・地域イベント・観光シーズンを整理し「強い日」と「弱い日」に分けましょう。これがダイナミックプライシングの土台です。
3
需要が高い日の料金を少しだけ上げてみる
いきなり大幅な変更は不要です。5〜10%上げて予約の動きを観察しましょう。この繰り返しがレベニュー管理の第一歩です。

「自分の旅館ではどこから手をつければいい?」

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