2026年6月 8日

OTA依存から脱却し、 自社直販を増やす方法 「売上は増えているのに利益が残らない」を解決する販売戦略の本質

収益改善・販売戦略

OTA依存から脱却し、
自社直販を増やす方法

「売上は増えているのに利益が残らない」を解決する販売戦略の本質

常井 大輝(トコイ ヒロキ)

株式会社 Hospitality Bridge 代表 / ホテル・旅館コンサルタント

「OTAからの予約は増えているのに、手元に残る利益が増えない」
「稼働率は上がっているのに、経営が楽にならない」

こういった相談が後を絶ちません。OTAは集客において強力なツールですが、正しく理解せずに依存すると収益構造が壊れていきます。OTAとの正しい付き合い方と、自社直販を増やす具体的な方法をお伝えします。

OTAのプラスアルファのコストを理解する

OTAの「手数料」は、契約書に記載されている基本手数料だけではありません。それ以外に積み上がる「プラスアルファのコスト」が、実際の支出を大きく押し上げています。

OTAで発生するプラスアルファのコスト(国内OTA)

ポイント原資負担:楽天ポイント・じゃらんポイントはホテル側が原資を負担。「ポイント10倍キャンペーン」に参加すると、その分だけホテルが支払う
キャンペーン参加費:「スーパーSALE」「お盆特集」「地域応援企画」など、特集ページへの掲載には別途費用や追加割引義務が発生する
優先表示費用:検索結果の上位に表示させるための掲載広告費
決済手数料:OTA経由のクレジットカード決済分がさらに差し引かれる

結果として、表示上の手数料8〜10%が実質15〜20%以上になるケースが大半です。

つまり、10万円の予約から手元に残るのは8万円以下ということが珍しくありません。この「見えないコスト」を正確に把握せずに経営判断をしている施設は非常に多いのが現状です。

レベニューマネージャーの落とし穴

ここで多くの施設が陥りやすい、重要な落とし穴についてお伝えします。

レベニューマネージャー(収益管理担当者)の使命は、本来「会社の利益を最大化すること」です。しかし現場では、「売上(レベニュー)を上げること」だけを目的にした動きをしてしまうケースがあります。

利益を無視した売上重視の動き(よくある落とし穴)

x OTAのキャンペーンに積極的に参加し、稼働率を上げて評価を得る
x 価格を下げることで予約数を増やし、表面上の売上を高く見せる
x 手数料やポイント原資の実質コストを計算せずにOTA施策を進める
x 「稼働率〇〇%達成」「予約件数〇〇件増」といった指標だけで成果を報告する

本来あるべき姿

o 売上ではなくGOP(粗営業利益)で成果を評価する
o チャネルごとの実質コストを把握した上で販売戦略を立てる
o OTAと直販の利益差を数字で示し、直販比率を高める施策を優先する
o 稼働率と単価のバランスを取り、RevPARと利益の両方を最大化する

現場で感じること:
売上が上がっているのに利益が残らない施設の多くは、このレベニューマネジメントの本質を見誤っています。会社の目的は利益の最大化。稼働率や予約数はその手段であり、目的ではありません。より効果的な施策を打ち続けることが、持続可能な経営につながります。

海外OTAへの依存が引き起こす2つのリスク

海外OTAとの付き合い方には、注意が必要な2つのリスクがあります。

リスク [1] 価格主導権の喪失

海外OTAは「会員限定料金」という条件で掲載契約を求めることがあります。これは「該当OTAの会員は10%ほどの割引を必ず行うこと」という契約上での縛りです。

具体的な影響:
・会員限定料金に同意すると、自社サイトと同じ料金か、それ以下の価格設定になる
・「直販の方がお得」という差別化ができなくなる
・ゲストが「海外OTAで予約した方が安いか同じ」と学習し、自社サイトへの流入が減り続ける
・価格を上げたくても「OTAの最安値保証に抵触する」という制約で動けなくなる

価格の決定権を外部に握られた瞬間から、自社の販売戦略の自由度は大きく制限され、管理、コントロールにも影響を及ぼします。

リスク [2] 一方的な戦略変更

海外OTAは日本の施設に事前相談なく、ルールや手数料体系を変更することがあります。

実際に起きた事例:
・特定の施設カテゴリーの手数料を突然引き上げ、事前通知は数週間前のみ
・パートナープログラムを導入し、参加しないと検索順位が大幅に下落
・キャンセルポリシーの基準を変更し、施設側の設定が無効化されるケースが発生
・アルゴリズムの変更で、これまで上位表示されていた施設が突然下位に落ちる

依存度が高いほど、このような変更への対応コストと経営へのダメージが大きくなります。

OTAと直販、利益インパクトの比較

実際に数字で見てみましょう。1泊15,000円・20室の旅館を例に、OTA予約と直販予約の利益差を比較します。

1泊15,000円の客室・月間100泊で試算

OTA経由(実質手数料15%と仮定)

売上:15,000円 x 100室 = 150万円
OTAコスト:150万円 x 15% = 22.5万円
手元に残る金額:127.5万円

直販経由(決済手数料3%のみと仮定)

売上:15,000円 x 100室 = 150万円
決済コスト:150万円 x 3% = 4.5万円
手元に残る金額:145.5万円

月間の利益差:17.5万円 / 年間:210万円

同じ売上・同じ稼働率でも、予約経路が変わるだけで年間210万円の利益差が生まれます。規模が10倍、100倍ならその額はとてつもない数値。この数字を経営者・担当者が把握しているかどうかで、施策の優先順位が大きく変わります。

自社直販を増やす5つの施策

数字の重要性を理解した上で、具体的な施策に移ります。

施策一覧

[1] 自社サイトを「予約したくなるサイト」に変える
[2] 直販限定の特典・プランをつくる
[3] メール・SNS公式でリピーターと直接つながる
[4] Googleビジネスプロフィールを直販導線にする
[5] チェックアウト時に次回予約を促す

[1] 自社サイトを「予約したくなるサイト」に変える

多くのホテルの自社サイトは「会社概要のようなサイト」になっています。以下の点を見直すだけで予約率が変わります。

・魅力的な写真:部屋・浴場・食事・外観・スタッフの顔を高品質で掲載
・「なぜこのホテルに泊まるべきか」が3秒でわかるトップページ
・3クリック以内で予約完了できる簡単なフロー
・GoogleやOTAの口コミを自社サイトに掲載して信頼感を高める
・スマートフォン対応(予約の70%以上がスマホ経由)

次のアクション:自社サイトをスマホで開き、初めて訪れるゲストの目線でチェックする。「3秒で魅力が伝わるか」「3クリックで予約できるか」の2点を確認する。

[2] 直販限定の特典・プランをつくる

OTAと同じ価格でも「直販にしかない価値」があれば選ばれます。

・直販限定の部屋グレードアップ・アーリーチェックイン・レイトチェックアウト
・直販限定の朝食無料・ウェルカムドリンク・地域体験プラン
・連泊割引は直販のみ適用

次のアクション:自施設のコストを確認し、OTAとの手数料差(15〜18%)の一部をゲストへの特典に転換する。年間210万円の利益差を「特典原資」として活用する発想で設計することで付加価値の創造とADRやCS、ESの向上など様々な計画が実行可能に。

[3] メール・SNS公式でリピーターと直接つながる

一度来てくれたゲストとの直接のつながりが、最も低コストな集客チャネルになります。

・チェックイン時に「SNSフォローなどで次回10%オフ」と案内
・滞在中にWi-Fiパスワードと引き換えにメール登録を促す
・退館後1週間以内に感謝メール+次回予約の案内を送る
・SNS公式アカウントで季節のプラン・限定キャンペーンを配信

次のアクション:SNS公式アカウントを開設し、チェックイン時の案内トークを1本作成する。まず月10人の登録を目標にする。

[4] Googleビジネスプロフィールを直販導線にする

ゲストがホテルをGoogle検索したとき最初に表示されるのがGoogleビジネスプロフィールです。ここを直販導線にすることで、OTAを経由させずに自社サイトへ誘導できます。

・「公式サイト直予約が最もお得です」とプロフィールに明記
・高品質な写真を月1回以上追加する(更新頻度が検索順位に影響)
・口コミへの丁寧な返信で信頼感を高める
・予約ボタンのリンクを自社予約システムに直接つなげる

次のアクション:今すぐGoogleビジネスプロフィールを開き、予約ボタンのリンク先が自社サイトになっているか確認する。なっていない場合は即日修正する。

[5] チェックアウト時に次回予約を促す

最も見落とされがちで、最も効果的な施策です。「また来たい」と感じているチェックアウトの瞬間こそ、次回直販予約を促す最高のタイミングです。

・「次回は直接ご予約いただくと〇〇の特典があります」と一言添える
・次回予約の割引クーポンをその場で手渡す
・SNS公式アカウントをその場で登録してもらう
・「いつ頃また来る予定ですか?」と会話をつなげ、仮予約を促す

次のアクション:チェックアウト時の案内トークを1本作成し、全スタッフに共有する。来月の直販予約件数を記録し始める。

OTAをやめるのではなく「正しく使う」

ここまでお伝えしてきたことは「OTAをやめましょう」ではありません。OTAは新規顧客との出会いの場として引き続き重要です。大切なのは「OTAで出会ったゲストを、次回から直接の関係に移行させていく」という発想です。

OTAと直販の正しい役割分担

OTA:新規ゲストとの出会いの場・認知獲得
自社直販:リピーターとの直接の関係・利益の最大化

OTA経由で来たゲストを「感動させて」「直接つながり」「次回は直販で」----
このサイクルを回すことが、中長期的な収益改善の本質です。

まとめ:
・OTAには手数料以外のプラスアルファのコストがあり、実質15〜20%以上になるケースが大半
・レベニューマネジメントの本質は「売上最大化」と捉えがちですが、会社の目的である「利益最大化」が本来の目的
・海外OTAへの依存は価格主導権の喪失と一方的な戦略変更リスクを生む
・同じ売上でもOTA→直販に移行するだけで年間数百万円の利益差が生まれる
・直販施策5つのうち、まず今日できる「Googleプロフィール確認」と「チェックアウト時の一言」から始める
・OTAは「新規出会いの場」として正しく使い、次回から直接の関係へ移行させるサイクルをつくる

「自社直販を増やす具体的な方法を相談したい」

施設の現状を診断し、最適な直販強化の施策をご提案します。
まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

常井 大輝(トコイ ヒロキ)|株式会社 Hospitality Bridge

セントラルフロリダ大学ローゼンホスピタリティマネジメント学部卒業。ハイアットリージェンシー那覇沖縄・琉球ホテル&リゾート名城ビーチでOTAセールス・レベニューマネジメントを担当。一休では開業後半年で全国1位を達成。2023年11月創業。

参考:観光経済新聞「第20回オンライントラベル予約実態調査」(2026年1月)/ 各OTA公式情報(2026年時点)

https://hospitalitybridgeconsulting.com/
Menu